理事長からの食品表示便り


-加工食品の原料原産地表示に関する食品表示基準改正のポイント-
名刺記載例

 3月29日に第39回消費者委員会食品表示部会が開催され、消費者庁から同月22日に諮問された加工食品の原料原産地に関する食品表示基準案に対する審議が開始されました。
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/bukai/039/shiryou/index.html
 また、消費者庁は、同月27日から、前記食品基準案に関する「食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)」に関するパブリックコメントの募集を開始しました。意見の募集期間は4月25日までとなっています。
http://www.caa.go.jp/foods/index18.html#public_meeting
 諮問された基準案は、当コーナーでもお示ししたように、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」の中間とりまとめの内容を踏まえたものとなっています。

●具体的な主な改正点
<義務表示対象>
◎義務表示の対象となる加工食品[基準第3条第2 項]→全ての加工食品(輸入品を除く。)
◎義務表示の対象となる原材料[基準第3条第2項] 原則として製品に占める重量割合上位1位の原材料
◎従来義務対象となっていた22食品群と4品目は現行どおり。[別表第15]

<対象から除くもの>
◎表示を要しないもの
・加工食品につき設備を設けて飲食させる場合(外食)[基準第1条]
・容器包装に入れずに販売する場合[基準第3条]
・食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合(インストア加工)[基準第5条]
・不特定又は多数の者に対して譲渡(販売を除く。)する場合[基準第5条]
・他法令により表示を行っている場合[基準第3条]
  「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」(平成21年法律第26号)
  「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」(昭和28年法律第7号)
◎表示を省略することができるもの
 ・容器包装の表示可能面積が概ね30㎠以下の場合[基準第3条]

<表示方法>
◎従来の国別重量順表示を原則としつつ、これが困難な場合には、可能性表示や大括り表示を
 行うことができる。[基準第3条第2項表1の五]
◎対象原材料が中間加工原材料である場合、原則として、製造地表示を行う。当該対象原材料に
 占める重量の割合が最も高い生鮮食品の産地が判明している場合には、製造地に代えて
 当該原材料の名称とともにその産地を表示することができる。[基準第3条第2項表1の二]
◎22食品群と4品目は現行どおり。 [基準第3条第2項表1の一及び2から5まで]

<新たな表示ルールの追加>
@ 対象原材料の産地について、現行ルールと同様に、国別に重量の割合の高いものから
 順に国名を表示する「国別重量順表示」を原則とする。[基準第3条第2項表1の一]
A 対象原材料が加工食品の場合、中間加工原材料の「製造地」を
 表示する。[基準第3条第2項表1の二]
B 原産国が3か国以上ある場合は、現行ルールと同様、3か国目以降を「その他」と
 表示することができる。[基準第3条第2項表1の四]
C 「国別重量順表示」が難しい場合には、一定の条件の下で、「可能性表示」や「大括り表示」
 の表示認める。[基準第3条第2項表1の五]

<例外表示>
1.可能性表示
 「可能性表示」とは、使用可能性がある複数国を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する方法であり、過去の取扱い実績等に基づき表示されるものである。
[認める条件]
 一定期間における国別使用実績又は使用計画からみて、国別重量順表示が困難な場合には、「可 
 能性表示」を用いることができることとする。根拠書類の保管を条件とする。
[誤認防止]
 可能性表示をする場合は、一定期間における使用実績又は使用計画における対象原材に占める 
 重量の割合 (一定期間使用割合)の高いものから順に表示した旨の表示を付記することとする。

2.大括り表示
 「大括り表示」とは、3以上の外国の産地表示を「輸入」や「外国製造」と括って表示する方法である。なお、輸入品と国産を混合して使用する場合には、輸入品と国産との間で、重量の割合の高いものから順に表示するものとする。
[認める条件]
 一定期間における国別使用実績又は使用計画からみて、国別重量順表示が困難な場合には、「大括り表示」を用いることができることとする。 大括り表示をする場合は、根拠書類の保管を条件とすることとする。

3.大括り表示+可能性表示  「大括り表示+可能性表示」とは、過去の取扱実績等に基づき、3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示できるとした上で、「輸入」と「国産」を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に、「又は」でつないで表示する方法である。
[認める条件]
 一定期間における国別使用実績又は使用計画からみて、大括り表示のみでは表示が困難な場合には、「大括り表示+可能性表示」を用いることができることとする。根拠書類の保管を条件とすることとする。
[誤認防止]
 「大括り表示+可能性表示」をする場合は、一定期間使用割合の高いものから順に表示した旨の表示を付記することとする。

参考:<例外表示の誤認防止措置として求められる「産地別使用実績」の要件>
 @ 過去一定期間における産地別使用実績(可能性表示及び大括り表示関係)

  製造年から遡って3年以内の中で1年以上の実績。 ただし、実績の根拠を1年とする場合、製造年から3年前の1年は不可。


 A 今後一定期間における産地別使用計画(可能性表示及び大括り表示関係)
  当該計画に基づく製造の開始日から1年以内の予定。


 B 重量順位の変動等(可能性表示及び大括り表示関係)
  過去の実績や合理的な使用計画に基づき、事業者が定めた1年で重量順位の変動や産地切替えが行われる見込みのある場合。

4.中間加工原材料の製造地表示
 対象原材料が中間加工原材料である場合は、原則として、当該中間加工原材料の製造地を「○○製造」と表示することとする。 ただし、中間加工原材料である対象原材料の生鮮原材料の原産地が判明している場合には、「○○製造」の表示に代えて、当該原材料名とともにその原産地を表示することができることとする。

<誤認防止策>
 使用割合が極めて少ない対象原材料の原産地についての誤認を防止するための措置として、一定期間における使用割合が5%未満である対象原材料の原産地について、当該原産地の後に括弧を付して、一定期間における使用割合が5%未満である旨表示する。

<おにぎりののり>
 別表第15に追加。おにぎりにあっては、のりの名称の次に括弧を付して、当該のりの原料となる原藻の原産地について国別重量順に表示する。


<業務用加工食品への対応>
 現行基準に加え、一般加工食品の用に供する業務用加工食品であって、当該一般加工食品の対象原材料となるものに表示義務(一般加工食品の製造業者が、対象原材料の原料の産地を表示する場合に、業務用加工食品の製造業者が当該原料の産地の情報を提供した場合には、この限りではない。)具体的には、現行基準で表示義務がある加工食品に、おにぎりののり、一般加工食品用の小分け原料となる加工食品を追加。


<経過措置期間>
 経過措置期間としては、食品表示基準の経過措置期間と同様、平成32年3月末

●消費者委員会食品表示部会(部会)における主な意見・質問
  部会では、上記の資料に基づく消費者庁からの説明の後、審議がなされました。主な議論の内容としては、総論的なものとしては、以下の通りでした。
 ・「すべての加工食品」を義務対象にする必要があるのか
 →「国別重量順」で表示が原則であるが、実行可能性から困難な場合は、例外的に可能な表示によ
  り対応することで、(これまで表示されなかった情報が提供される点で)有効な情報として消費者の商
  品選択に資する。また、個別の国名が分かっている食品のみを対象に規制することは、制度上あり
  得ない。前回の部会において、専門家委員会と重複する議論はしないことを確認。
 ・ルールが複雑で普及啓発により、消費者及び事業者に本当に理解されるのか
 →どういう手段で普及・啓発するかではなく、どれだけ理解し活用されるかが重要で、客観的なモニタ
  リングが必要と認識。

その他の質問や各論的な意見としては、以下の通りでした。
 ・中小企業の実行可能性の確保→パブコメを踏まえた適切な対応
 ・経過措置期間が短い→同上
 ・現行監視体制で立ち入り等の件数は?→年間約3万件で約6%が指示
 ・災害等原料調達急変時の対応→これまでも実績としている臨時の措置を講じる。
 ・表示事項の増加に伴うスペースの問題(文字の大きさと情報量との関係)
 →他の表示事項も合わせて実態把握した上で検討
 ・「可能性表示」という表現は不適当→正式名ではないものの再考する。
 ・例外表示の根拠としての過去の産地別使用実績の表現を統一した方がよい
 →事情がそれぞれ異なるため柔軟にしたい。   等

●今後のスケジュール
 次回の部会は、パブコメ及びWTO通報の結果を受け、6月上旬に開催することになりました。また、次回で結論が出ない場合は、6月下旬に再度開催となります。
 いずれにしましても、この夏には基準が告示される予定ですが、その時点では、経過措置期間が現行新基準と時期を合わせた最低2年半ほど設定されることになります。
 また、積極的なパブリックコメントの提出を期待するものですが、それらの意見が部会等に反映していただくためにも、意見とともにその「根拠」(例えば、「経過措置期間として○年必要」の場合、「現行の原料受発注のシステム変更や導入に最低□年及び試行に△年で計〇年が必要」のように)をセットで出されることを望みます。
 なお、基準案に対する全国説明会も開催予定ですので、機会があれば参加されますことをお薦めします。
http://www.caa.go.jp/foods/index18.html#setsumeikai

(以上、平成29年3月30日現在)




-若年層における食品表示教育の現状- (平成29年3月1日)
-食品表示制度と食育政策- (平成29年2月1日)
-新年のご挨拶 新たな食品表示基準等への対応の年に- (平成29年1月1日)
-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(中間取りまとめ)- (平成28年11月30日)
-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(2)- (平成28年10月31日)
-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(1)- (平成28年9月29日)
-「理事長からの食品表示便り」コーナーの創設に当たって- (平成28年9月1日)


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