理事長からの食品表示便り


-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(1)-
名刺記載例

 食品表示法が施行されて、1年半が経過しました。同法に基づき内閣府令で規定された食品表示基準は膨大な量になっておりますが、加工食品及び添加物には、平成32年3月31日までの経過措置期間が設定されています。一方、生鮮食品については、平成28年9月30日までの経過措置期間が切れ、新制度がさらに一歩進展したことになります。
 ところで、食品表示一元化検討会以降懸案になっていた幾つかの重要な課題が宿題として残っており、準備が出来次第検討することになっていました。
 具体的には、加工食品の原料原産地表示、インターネット販売の食品表示、機能性表示食品において機能性関与成分が不明確なものの取扱い、遺伝子組換え表示及び添加物表示などで、これらは消費者基本計画においても記載されています。
 このうち、前3つは、昨年末〜本年はじめに、消費者庁において各課題ごとの検討会あるいは懇談会が設置され、現在も検討が続けられており、いずれも今秋には中間取りまとめが予定されています。
 このうち加工食品の原料・原産地表示に関しては、消費者庁と農林水産省との共催での「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が本年1月末に設置され、これまで8回の検討がなされてきました。
 現行の産地表示に関しては、食品表示基準により、生鮮食品には「原産地」を、加工食品については、国内製造品の一部に「原料原産地名」を、輸入品には「原産国名」を表示することが義務付けされています。また、外食については、産地表示を含め表示の義務付けがありません。
 加工食品の原料原産地表示については、平成13年導入され、これまで、22食品群及び4品目に表示が義務付けられています。
 この課題については、これまで幾多の検討がなされてきましたが、その中で平成23年〜24年の食品表示検討会においても、新たな観点から表示の義務付けの根拠とすることについて議論を進めましたが、合意には至らず、食品表示の一元化の機会に検討すべき項目とは別の事項として位置付けることが適当と整理されました。
 そうした経緯とともに、今回は「消費者基本計画」(平成27年3月24日閣議決定)において、「実態を踏まえた検討を行うべき個別課題」とされるとともに、「食料・農業・農村基本計画」(平成27年3月31日閣議決定)においても、「加工食品の原料原産地表示について、実行可能性を確保しつつ拡大に向けて検討する」とされたところです。更に、「総合的なTPP関連政策大綱」(平成27年11月25日TPP総合対策本部決定)において、「原料原産地表示について、実行可能性を確保しつつ、拡大に向けた検討を行う」ことが盛り込まれました。
 閣議決定とは、政府全体の方針として合意されたということで、特にこれまでの背景と異なる点は新たにTPP対策としても位置づけされたことが特徴で、検討会においても生産者サイドの委員が何人か加わっています。
 更に、その後「日本再興戦略 2016」(平成 28 年6月2日閣議決定)においては、「全ての加工食品への導入に向け、実行可能な方策について検討を進める。」という位置づけが規定され、閣議決定において一歩進んだ「全ての加工食品」を対象とすることが示されました。
 一方、検討会においては、これまで消費者、生産者、食品産業関係者等からのヒヤリングやアンケート調査の結果なども踏まえ熱心な議論がなされてきました。
 この件での消費者の意識としては、加工食品を購入する際に、「原料原産地名」について「いつも参考にしている」又は「ときどき参考にしている」を選んだ人は合わせて76.8%を占めています。平成23年度実施の食品表示に関する消費者意向等調査の結果と同様に、消費者の関心は高い結果を示すとともに
(n=3,000)、参考にする理由としては、「原料が国産のものを選びたい」は65.4%、 次いで「原料が特定の原産国のものを選びたい又は選びたくない」は 39.0%となりました(n=2,777)。
 このように、消費者が個別国名の情報を希望している実態から、検討会としては、全ての加工食品を対象に、原則、国別表示とすることを前提として、実行可能性を考慮した場合、任意の取組も含め、どのような方法で表示が可能かという観点で検討を進めることになりました。
 そして、国別表示が難しい場合には、事業者の実行可能性を踏まえて、 @「可能性表示」 A「大括り表示」 B「中間加工原材料の表示」などの方法も可能か否かを検討することになっています。ただし、それぞれの表示方法について 、認める条件や誤認を防止するための方法を明確にすることが必要となります。
 次回の10月5日の第9回検討会では、これまでの検討を踏まえて、事務局から具体的な表示方法の案が提示される予定です。具体的には、表示の義務付け対象となる原材料(重量割合順で何位まで)、義務表示の方法(複数国の場合の原則や表示が困難な場合の前記@〜Bの条件など)、22食品群と4品目の現行ルールの取り扱い、表示媒体などが取り上げられると思われます。
 したがいまして、当該検討結果のイメージがより明確になると予想されますので、次回ご報告させていただくことにします。

(以上 2016年9月29日現在)





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